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たいやきくんだけじゃない! 希代の歌手"子門真人"研究序説@洗足学園音楽大学

25.3.9 洗足学園音楽大学 ブラックホール1F ビッグマウス

 

出演/高野二郎 不破了三 清水菜穂子 福田裕彦 ジュランジュラン(福田裕彦 高野二郎)

 

 

コーラス/清水菜穂子 

演奏/カラオケ Ba.不破了三 ジュランジュラン(Pf.福田裕彦 fl&Per.高野二郎)

 

 

子門真人さん。

1966年に藤浩一の名前で「故郷の悲しき星/涙のギター」でデビューされるも約1年半後に引退。

その後はフジ音楽出版に入社。サラリーマンの傍らスタジオミュージシャンとしても活動される中、

1971年に藤浩一の名前で歌われた特撮「仮面ライダー」のオープニングが大ヒット。

翌1972年に円谷音楽出版に移籍。楽曲管理の総責任者を務められるかたわら、副業として歌手を継続。

特撮「アイアンキング」や特撮「レッドマン」など円谷プロ制作の特撮作品の楽曲を歌われたほか、

アニメ「科学忍者隊ガッチャマン」やアニメ「勇者ライディーン」などを代表格にアニメ、特撮ソングを多く歌われました。

子門さんは特定のレコード会社に所属していなかった為、多数のレコード会社で様々な名前で歌を歌われたり楽曲提供をされていて、

椿もとき、谷あきら、大安蓮、布川富美雄、司馬拳、ピーター・サイモン、サタンタなどの名前を使用されています。

高揚感を誘う独特の張りのある歌声と、臨場感ある抑揚の効いた歌いぶりや、柔らかく優しい歌いぶりなどで魅せられ

後にささきいさおさん、水木一郎さんと共に「アニソン御三家」と呼ばれる程にご活躍されます。

 

そんな子門さんが一躍時の人となったのはフジテレビ系「ひらけ!ポンキッキ」で歌われた「およげ! たいやきくん」の大ヒット。

本曲は当時の世相の共感を受け老若男女から支持され、シングルチャートで初登場以来11週連続1位を記録して数々の賞を受賞、

売り上げは450万枚を越え、日本のビジネス音楽売上史上最高売り上げとなったこの記録は、

発表から50年経った2025年現在もなお破られていません。

 

「およげ! たいやきくん」の大ヒットを受けて一躍時の人としてテレビの歌番組やドラマやミュージカルに多く出演されましたが、

子門さんご自身は歌手活動は副業と位置付けられていたとの事で、広告代理店に転職され一時期は芸能界を引退。

その後退職されると、歌手活動に復帰。ミュージカルへの出演やアニメやゲーム、ラジオ番組のテーマソングを歌われましたが、

1993年頃を境に芸能活動はされておらず、実質引退状態であり、テレビや雑誌等の取材依頼も断られているとの事。

 

そんな子門さんの足跡を辿るべく、子門さんをはじめアニメソングにとても造詣が深い音楽ライターの不破了三さんと

子門さんを敬愛され、特撮「電人ザボーガー」の2011年の映画版では子門さんの歌われた主題歌をカバーされるなど、

"平成の子門真人"を標榜されて歌唱法の研究と実践、教育普及活動を行っているテノール歌手の高野二郎さんが

レクチャーコンサート「たいやきくんだけじゃない! 希代の歌手"子門真人"研究序説」を開催されました。

 

会場は高野二郎さんが教鞭を取られている洗足学園音楽大学内にあるブラックホールにあるビッグマウス。

入場時には今回のコンサートの要旨と演奏曲が書かれたプログラムが配布され、演奏曲はそれぞれ色分けされていました。

本格的ライブスペースである本会場はおよそ180席ほどの椅子席になっており、今回は自由席。

開演までの間はBGMとして子門さんが歌われた様々な楽曲が流れており、中にはなかなかに貴重な曲もありました。

 

ステージ上には中央に出演者の皆さんが使用されるマイクスタンドと椅子が各所に設置されていた他、

向かって左側にグランドピアノ、右側にベースとその横に長机がありノートパソコンなどの機材が設置。

中央には高野さんが使用されるフルートとタンバリンが設置されていました。

ステージ後方の壁面はスクリーンになっており、今回の講演のWEBアンケートのQRコードと説明文が映されていました。

 

観客が続々と入場し、開演時間を少し過ぎた頃、上演中の諸注意がアナウンスされました。

しばらくすると会場の照明がゆっくりと暗くなっていき、出演者の皆さんが登場されてセッティングが完了すると、いよいよ開演です。

 

01:およげ! たいやきくん/高野二郎

-MC-

 

一曲目はフジテレビ系「ひらけ!ポンキッキ」より子門さんの代表曲ともいえる「およげ! たいやきくん」。

ピアノアレンジのエレガントさを感じつつ、高野さんの第一声からその踏襲ぶりと歌声の迫力に圧倒されました。

ここから歌われる楽曲はすべて後方スクリーンにそのジャケットと作詞、作曲、編曲者が記されて写されていました。

 

・今回は洗足学園音楽大学創立100周年記念コンサートの一環として開催であるという事で、

 代表担当講師でありミュージカルコースおよびダンスコースの講師として高野さんがご挨拶。

・高野さん「おそらく子門さんを音楽大学で研究の対象として真面目に研究し、レクチャーするのは初めての事だと思います。

     皆様は歴史の生き証人として、どうか濃厚な二時間をお楽しみいただければと思います」

・ここで高野さんから今回の出演者の皆さんをご紹介。

・今回は高野さんと福田裕彦さんによる実写特撮楽曲の実を演奏するユニット・ジュランジュランのライブも兼ねているとか。

 

・ここからは不破さんの解説で子門真人さんについての解説。

・後方スクリーンにスライドが映し出され、文字と写真を交えて展開されて行きました。

・まずは子門さんのプロフィールをご紹介。

・作曲家としてすぎやまこういち先生に師事され、筒美京平さんとは兄弟弟子というご関係。

・円谷音楽出版移籍後の円谷プロ主題歌担当は歌手としての起用なのか社員としてなのか。

・「たいやきくん」ヒット後はミュージカルの出演やプロデュースなどの活動を開始。この頃の記録はとても貴重だとか。

・不破さん「現在の子門さんがどうされているかはあまり詮索するものではないと思います。

     今回は『"子門真人"研究序説』という事で、子門さんの消息について情報があるかと思った方もいらっしゃるかもしれませんが、

     そんなものはございません。そこは詮索するだけ野暮ということでご了承ください」

02:ガッチャマンの歌 (TVサイズ)/高野二郎

-MC-

 

ここでアニメ「科学忍者隊ガッチャマン」より初代エンディングであり二代目オープニングをテレビサイズで。

高野さんは子門さんの代表曲のひとつである本曲を伸びやかに歌われており、実に心地よい聞き応えでした。

●声楽家の視点から見た"子門真人"の歌唱発声考察

 

・ここからは声楽家である高野さんによる子門さんの歌唱法、発声法の考察。

・子門さんの歌声のジャンルから歌唱の特徴である鼻腔共鳴、音域の広さ、発声の切り替えの巧みさなどを解説。

・観客と共に実践を交えた声楽の技術面の解説はとても分かりやすく、時折ユーモアを交えながら

 子門さんの歌声がどういった区分になるか、どういった特徴があるかをお話されていました。

 

03:ゼロテスター (TVサイズ)/高野二郎

04:流星人間ゾーン (TVサイズ)/高野二郎

05:ファイヤーマン (TVサイズ)/高野二郎

-MC-

 

子門さんは高校時代に声楽を勉強されていたとの事で、それが下地になっているのではないか、と推測される楽曲を三曲。

まずはアニメ「ゼロテスター」より初代オープニングを張りのある歌声で弾むように元気よく歌われ、

続いての特撮「流星人間ゾーン」よりオープニングでは独特のうねる様な歌い回しが実に興味深く、

最後の特撮「ファイヤーマン」よりオープニングは特に高野さんが子門さんに近づけるのを苦戦されているとの事でしたが

高野さんはドラマチックな曲調をとてもダイナミックに歌われており、迫力満点でした。

●"子門真人"の外国語による歌唱

 

・ここでは高野さんと不破さんによる子門さんが歌う外国語楽曲に関しての考察。

・高野さんは母音に着目し、「子門ウムラウト」と命名。

・「ウ」の歌唱を例に挙げ、子門さんのまるでドイツ語のような発声に注目。

・発音が上手いの更に向こう側にいる子門さん。

 

・ここで不破さんの解説を交えながら参考曲を聞く事に。

 不破さん「子門さんが全編外国語曲で歌われている曲というのは意外に少ないんですね。

     それに代わる曲として持ってきたのが、20世紀が終わる頃にとんでもない歌手が現れたんですね」

・この時スクリーンに映し出されたのはアルバム「星獣戦隊ギンガマン ソングコレクション2」のジャケット。

・スーパー戦隊シリーズの特撮「星獣戦隊ギンガマン」の主題歌を歌われた正体不明の覆面歌手である希砂未竜さんの話。

 不破さん「明らかに子門さん……の影響下にある方で」

 観客笑。

 不破さん「そういった意味では高野さんと同じ"子門インスパイア系"といえますね。

     この方がエンディング『はだしの心で』を英語で歌われているのですが、

     これを聞いていただき、子門さんが歌われた英語曲の代替になればと思います」

 

参考曲:Naked Mind/希砂未竜

 

特撮「星獣戦隊ギンガマン」よりエンディング「はだしの心で」の英語歌詞版であり、第四十三章「伝説の足跡」エンディング。

一番をじっくりと聞いた後は音量を下げ、曲を流したままで興味深い解説を続けられていました。

06:THE THEME SONG OF "ULTRA-SEVEN" (TVサイズ)/高野二郎

07:ULTRA-7 (TVサイズ)/高野二郎

-MC-

 

子門さんの英語曲という事で、ウルトラマンシリーズから特撮「ウルトラセブン」よりハワイ版オープニングと挿入歌。

高野さんは子門さん独特の異国情緒溢れる歌いぶりを踏襲されて歌われた他、随所でフルートの演奏も披露されました。

 

 

~休憩~

 

ここで第一部が終了し、会場の照明が明るくなり約10分間の休憩時間へ。

休憩時間中もBGMとして子門さんが歌われた楽曲が流れており、なかなかに嬉しい曲ばかりでした。

そろそろ休憩時間が終わる事になると会場の照明がゆっくりと暗くなり、出演者の皆さんが登場されてセッティング。

 

 

●カバー歌手"子門真人"

 

・第二部は不破さんによるカバー歌手としての子門さんの解説から。

・特定のレコード会社に所属していなかった為、多数のレコード会社をまたにかけて歌われていた子門さん。

・スクリーンには各レコード会社が発売した混載盤(オムニバス盤)のレコードが何枚も映し出され、

 不破さんが「またにかけるにも程がります」とお話されていました。

 

・ここで高野さんを交えてポップス・歌謡界(商業音楽)とクラシック界(芸術音楽)におけるカバー曲の違いを解説。

・商業音楽ではどちらかというとオリジナルが重視される傾向。カバーはオリジナルをお借りするという感覚。

・芸術音楽では同一楽曲を様々な音楽家が演奏するのが主流。作曲家達の意図を忠実に汲み取って再現するのが再現芸術。

 

・不破さん「クラシックの様に100年も200年も前の音楽がなぜ今も生き残っているかというと、誰かが引き継いでいるからで、

     引き継ぐという事を誰かが行わないと、その音楽は100年先には残っていかないんです。歌舞伎や落語がそうですね。

     なのでアニメ特撮ソングもそろそろそういった動きをしていかないと、我々がいなくなったら70年代の曲は終わってしまいます。

     アニメ特撮ソングのファンの方はカバーに不寛容なほどに厳しいのですが、広く心を開かないと100年先に残らないと思います」

 高野さん「実は今回、公の場で『たいやきくん』と『ガッチャマン』を初めて歌ったんですよ。

     先程不破さんがおっしゃった通りで、カバーで歌うという事はハードルが高いんですね。

     やはり"子門さんといえば"という曲なので、今回は意を決して歌わせていただきました」

 

参考曲:嵐よ叫べ/子門真人

 

子門さんのカバーソングはご自身がオリジナル歌手なのではないかと思う程に全力で歌われているというお話から、

特撮「変身忍者嵐」より、水木一郎さんが歌われたオープニングのビクター版カバー。

不破さんが傑作とお話された本曲は、水木さんとはまた違った高揚感をさそう歌いぶりでした。

一番を聞いた後は音量を下げ、曲を流したままで解説が続けられました。

 

08:ウルトラマンレオ/高野二郎

09:星空のバラード/高野二郎

10:アイアンキング (TVサイズ)/高野二郎

-MC-

 

子門さんがカバーされた曲を高野さんが更にカバーされるという非常にユニークなコーナー。

まずは特撮「ウルトラマンレオ」より真夏竜さんが歌われたオープニングを一番は子門さん、二番は真夏さん風にご披露。

高野さんは子門さん、真夏さんお二人それぞれの節回しや特徴を的確に捉えて歌われており非常に興味深かったです。

続いては同じく「ウルトラマンレオ」より印象的な場面で流れていた挿入歌を一番は子門さん、二番はオペラ歌手で。

一番のセンチメンタルな子門さんの歌いぶりから、二番では打って変わって壮大なオペラ歌唱になって迫力満点。好対照の魅力でした。

ラストは特撮「アイアンキング」より子門さんがご自身で歌われて東芝、ソニー、コロムビアでもカバーされているオープニング。

アイアンキングっぽくもあり、シルバー仮面っぽくもあるソフビを胸に差してとても勇ましく歌われていました。

 

 

●ミュージカル歌手"子門真人"

 

・続いては「たいやきくん」のヒット後、80年代にミュージカルの世界で活躍した子門さんについて考察。

・ジャンルでいうとミュージカルは演劇、オペラは音楽に分類される。

・ミュージカルは人間はもちろん、様々なものを演じて歌う「演唱」の分野であり、

 子門さんは特にキッズソングにおいて数々の「演唱」を感じさせる楽曲を残されている。

 

参考曲:ガリバーがころんだら/子門真人

 

ここで子門さんの演唱の片鱗に迫るべく、参考曲として「ガリバーがころんだら」を聞いて見る事に。

子門さんによるオリジナルの子供の歌を収録したアルバム「歌え!ハッピッピー」に収録されていた本曲は、

後に日本テレビ系「おはようこどもショー」で使用されたことを受け、曲順を変えたアルバム「ガリバーがころんだら」としても発売。

おおらかな子門さんの歌いぶりはさながらガリバーの巨大感を感じられ、歌いぶりの多彩さに改めて感じいりました。

一番を聞いた後は音量を下げ、曲を流したままで解説を続けられました。

 

11:アマゾンライダーここにあり (TVサイズ)/高野二郎

12:ホネホネロック/高野二郎

-MC-

 

演唱のように自在な歌いぶりで魅せる子門さんの楽曲を二曲連続で。

まずは仮面ライダーシリーズから特撮「仮面ライダーアマゾン」よりオープニング。

緑と赤のアマゾンライダー風の照明の中、高野さんが高揚感を誘う歌声を披露され、後奏の随所ではアマゾンの「キキィ」という声もご披露。

続いてはフジテレビ系「ひらけ!ポンキッキ」より、根強い人気の「ホネホネロック」。

高野さんは張りのある歌声でダイナミックに歌われた他、間奏では印象的なアドリブや叫び声も踏襲されていました。

 

 

●音楽家"子門真人"

 

・歌手の他にも作詞作曲編曲、プロデュースや楽曲管理の心得もあった子門さんを掘り下げ。

・スクリーンには子門さんが作詞作曲編曲楽曲提供などをされたレコードが多く映し出され、

 グループサウンズ、フォークソング、歌謡曲など幅広い楽曲を手がけられていたことが伺えました。

・子門さんの様々なスタイルやジャンルに順応する"総合音楽家"としての高い音楽性を垣間見る。

・手がけられた楽曲に共通する物悲しさと抒情感。

 

参考曲:サーキットの狼/子門真人

 

ここで子門さんが作曲を手がけられた楽曲の中から映画「サーキットの狼」よりオープニング。 

最初から聞く人を惹きつけ、曲が進むにつれてドラマチックさが増していく本曲はなんとも魅力的。

一番を聞いた後は音量を下げ、曲を流したままで解説を続けられいました。

 

13:ゴジラのお嫁さん (1C)/高野二郎

14:ロック・ロック・ゴジラ (1C)/高野二郎

15:ゴジラとジャガーでパンチパンチパンチ (1C)/高野二郎

-MC-

 

ここでは作曲を含めた子門さんの総合的音楽化としての幅広さを感じる「珍曲」をピックアップ。

ゴジラシリーズから映画「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」リバイバル版イメージソングから、

おおらかな歌いぶりが魅力の「ゴジラのお嫁さん」と頼もしさあふれる「ロック・ロック・ゴジラ」をご披露。

最後の映画「ゴジラ対メガロ」よりエンディングでははつらつとした勇ましさを味わう事が出来ました。

 

 

●本日のまとめ

 

・タイトルにある「希代の歌手"子門真人"」のどういった所が希代の歌手なのかを掘り下げるコンサートという事で

 高野さんがこれまでのテーマをひとつずつ振り返りつつ、改めて解説。

・高野さん「大学というのは教育機関ではありますが、日々の教育と同時に研究する事が求められます。

     私の大学教員としての研究テーマが『子門真人』という事なんですね。

     本業はオペラ歌手でミュージカルもやりますけれど、生涯かけて『子門真人』という高い頂を目指す旅は続きます」

・不破さん「高野さんは"平成の子門真人"を標榜されていますが、年号が変わって"令和の子門真人"とはならないんですか?」 

 高野さん「はっはっは。僕自身は平成に子門さんの事を研究しましたし、僕一人で終わってしまっては困るんですよ。

     なので令和には令和の子門さんを研究される方が出てくるのを待っています。

     ただ、昨年出演したコンサートでしょこたん(中川翔子さん)に"令和の子門真人"呼ばれてしまったので

     今は"平成・令和の子門真人"って呼ばれてしまう事もあるんですよね」

 観客笑。

 不破さん「我々50歳を過ぎているんですけど、50歳を過ぎたらアニメソングを懐かしいとかカッコイイだけで聞くのは許されないのかなと」

 観客笑。

 不破さん「やはり次世代に伝えて行くという事をしないと絶えてしまいますからね。

     そういった意味では今の高野さんのお言葉や私の執筆活動なんかは次世代に伝えていくという事になるのかなと思います」

 

16:勇者ライディーン (TVサイズ)/高野二郎

17:戦え! 電人ザボーガー/高野二郎

-MC-

 

ラストのコーナーはアニメ「勇者ライディーン」より、子門さんの代表曲の一つであるオープニングから。

歌う前にライディーンの人形を胸ポケットに差した高野さんは、はつらつとした歌声で実にのびやかに歌われていました。

コンサートの締めくくりは特撮「電人ザボーガー」のオープニングであり、2011年の映画版の主題歌。

ザボーガーを思わせる赤と白の照明の中、高野さんはザボーガーの人形を胸に差し颯爽とした凛々しさで歌われていました。

 

・拍手の中、高野さんが今回の出演者の皆さんをお一人づつご紹介され、最後に改めて自己紹介。

 

・高野さん「今度は全曲フルサイズで歌うコンサートもやりたいと思っております。

     その時は是非足をお運びくださいましたら幸いです。本日はありがとうございました!」

 

出演者の皆さんが拍手で見送られた後、拍手がアンコールを思わせる手拍子へと変わっていきましたが、

アンコールは行われず、会場の照明が明るくなり、BGMと閉演のアナウンスが流れ出して

「たいやきくんだけじゃない! 希代の歌手"子門真人"研究序説@洗足学園音楽大学」は終演となりました。

 

子門真人さんに誠実に真正面から向かい合った今回のコンサート。

高野さんの声楽家としての観点から子門さんの歌唱法の考察と、不破さんの豊かな知識を持ちながらも決して肩肘張らない洞察、

そしてそれぞれの分野を行き来しながらの解説はとてもわかりやすく、思っていた以上にアカデミック。

高野さんによる研究の実演はどの曲も第一声から息を飲むほどの素晴らしさで、

また、楽曲のアレンジはオリジナルを踏襲しつつも情熱的な演奏で音の少なさを補われており、

少ない楽器とコーラスのみの演奏は高野さんの研究の実演を大いに際立たせていました。

歌手として、そして総合音楽家としての子門さんの研究は、アニメソングを次世代へ伝える動きの一つとして

とても意義のある事に感じ、子門さんへの敬意を感じて大変興味深く、続く研究発表を期待しております。

 

 

 

補足

 

・今回のコンサートは洗足学園創立100周年記念事業の一環で、担当教員が企画をし、コンペディションを通過したものを開催。

 高野さんもまさか企画が通るとは思わなかったとの事でした。

 

・不破さん「子門さんの一般的なイメージは熱いボーカリスト、アフロヘアから連想されるファンキーさ、歌のうまさ、

     英語風の発音のカッコよさなどあるかと思いますが、そこで終わっては学問になりません。

     なぜ熱いのか、なぜカッコイイのかを追及するのが音楽大学で開催する理由でもあります。

     子門さんの新しい評価軸というのを高野さんが示したいというのが今回のコンサートです」

 

・プログラムに書かれた曲目の色分けは子門さんの楽曲を集めたアルバムシリーズである

 「ヴォーカル・コンピレーション」全八種に収録盤の色に準じたものというこだわりぶり。

 

・不破さんは今回のスライド制作もご担当。

 

・福田さんは怪獣大好き。2011年の映画版「電人ザボーガー」での高野さんの起用は音楽監督を務められた福田さんあっての事だとか。

 

・清水さんは高野さんと同じく洗足学園音楽大学の講師をされているそうです。

 

・不破さん「よく講演をする時には座ったままで失礼しますというのですが、

     まさかベースを持ったままで失礼しますという日が来るとは思いませんでした」

 観客笑。

 

・子門さんは声はつなぎ目が無く、高さによって声の質感が変わらない。

 

・ものすごいスパークを味わう事が出来る「子門真人の3番」の魅力。

 

・日本語なまりの無い英語の歌唱を目指すには、高音部の周波数を聞きとれるようになる事。

 子門さんはこれを意識されていたのか、それとも感覚的にもちあわせていらっしゃったのか。

 

・歌われる曲の作品のソフビ人形を胸ポケットに差して歌われる事が多い高野さん。

 第二部冒頭では第一部で胸ポケットに差して歌うはずたった流星人間ゾーンとウルトラセブンをご紹介。

 

・高野さんは「ウルトラマンレオ」を歌われる際はレオを胸に差し、変身アイテムのレオリングを指にはめられていました。

 

・不破さん「高野さん、ちなみに『ウルトラマンレオ』はビクター、ポニーキャニオン、コロムビア、ソニーと4種類あるんですけど……」

 この時、スクリーンには「ウルトラマンレオ」が収録された各レコード会社のレコードジャケットが映し出されていました。

 不破さん「我々、演奏チームはどのバージョンを想定すればいいのでしょうか」

 観客笑。

 高野さん「個人的には好きなのはビクターなんですが、テンポ的にはソニーなんですけどぉ」

 不破さん「ソニー版はだいぶもったりしていますね。じゃあ僕の方はポニーキャニオン版を意識して……」 

 観客笑。

 

・「星空のバラード」の子門さんとオペラ歌手の歌い分けはジュランジュランでよく行われているとか。

 

・「ガリバーがころんだら」は誰がガリバーなのか。

 

・不破さんは「ヴォーカル・コンピレーション」の第三期三枚の選曲構成をご担当。とにかくカバー曲を詰め込む。

 当初は「サーキットの狼」のCD化を第一目標と掲げて企画をしたものの、レコード会社はカバーに着目したそうです。

 

・「戦え! 電人ザボーガー」のラストで赤と白の照明にザボーガーの目の色である黄色の照明が差し込んだのはとてもドラマチックでした。

 

・不破さん「今日は『序説』。まだ第一章にもなってないですから。アンケートでその旨をお書きいただけましたら幸いです。

     第二回はまだかとか、ジュランジュランのコンサートはいつになるんだ、とかも」

 観客笑。

 

・高野さん「今は子門さんの歌唱をマネするとか模写するのではなく、理論的に理解して踏襲して表現するようになりました。

     どんな楽曲でも子門さんを踏襲して歌えるようになってきました。

     先程、『歌い継がなければその歌は廃れていく』と不破さんがお話されていました。

     私の力がどの程度なのかはわかりませんが、歌い継いで後世につないで行くのがライフワークになると思います」 

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