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菊池俊輔 音楽祭
17.11.11 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール 

 

作曲・協力/菊池俊輔

 

構成・協力/貴日ワタリ

 

楽譜作成/青島佳祐 今堀拓也 木下紀子

 

司会/西耕一

 

指揮/山﨑滋 
コンサートマスター/三宅政弘 
演奏/オーケストラ・トリプティーク 

   

 

1960年代に映画、ドラマ、アニメと様々なジャンルで楽曲を手がけられている菊池俊輔先生。 
勇ましい管楽器、縦横無尽の弦楽器、荒ぶる打楽器で誘われる高揚感と独特の哀愁を感じる音色は"菊池節"(きくちぶし)と称され、 
時代劇、ヒーロー、ロボット、ギャグなど様々な作品を手がけられ、多くのファンの心を捉えています。

 

これまで伊福部昭先生、渡辺宙明先生、黛敏郎先生、佐藤勝先生、渡辺岳夫先生など 
映画やアニメの音楽を手がける作曲家の方々にスポットを当ててきた西耕一さん企画によるシリーズの一環として、 
11月に86歳のお誕生日を迎えられたのを記念して菊池先生のスペシャルコンサートが開催されました。

 

コンサートの性質上、今回のレポートはざっくりとした内容でございます。予めご了承頂けましたら幸いです。

 

会場は渡辺宙明先生のコンサートシリーズも開催された渋谷区文化総合センター大和田四階にあるさくらホール。 
来場者には今回のプログラムが書かれたパンフレットが配布され、

入場するとステージ上にはすでに各楽器のブースがセットされていました。 

しばらくするとオーケストラ・トリプティークの皆さんがステージに登場され、最後に指揮の山﨑滋さんがご登場。 
オーケストラ・トリプティークの皆さんの準備が整った事が確認されると「菊池俊輔 音楽祭」の開演です。

 

 

「菊池俊輔 音楽祭オープニング曲集」 
01:ワイワイワールド (TVサイズ) 
-MC- 
02:レッツゴー!! ライダーキック (TVサイズ) 
03:戦え! 仮面ライダーV3 (TVサイズ) 
04:たたかえ! キャシャーン (TVサイズ) 
05:とべ! グレンダイザー (TVサイズ) 
06:宇宙パトロールホッパ (TVサイズ) 
07:暴れん坊将軍のテーマ 
~立ち回りBGM IIII-43 
-MC-

 

幕開けは「菊池俊輔 音楽祭オープニング曲集」と題し、菊池先生が手がけられた彩り豊かなアニメ、特撮のオープニング曲をTVサイズで。 
まずはポップな音色と高らかな管楽器の前奏が楽しい、アニメ「Dr.スランプ アラレちゃん」オープニングで賑やかにスタート。 
コンサートの企画・プロデューサーである西耕一さんが登場されてご挨拶と今後の曲紹介をされた後は、

特撮「仮面ライダー」よりオープニング。 オーケストラでの演奏を目の当たりにすると、

慣れ親しんだ音色がどういった楽器で演奏されているかが文字通り一目瞭然で興味深く、

 続く特撮「仮面ライダーV3」オープニングでも、ホースを振りまわす事で音が出る楽器サウンドホースで

風音を表現されたのを見る事が出来ました。 アニメ「新造人間キャシャーン」オープニングでは

冒頭のナレーション部分のピアノの鍵盤を叩き付けるような不穏なサウンドから演奏される嬉しさ。 
シリアスな「キャシャーン」に続いては、アニメ「UFOロボ グレンダイザー」オープニングでは、

軽快なテンポとダイナミックな音色で菊池先生の幅広さを体感。 
そして菊池先生のアニメ音楽デビューとなるアニメ「宇宙パトロールホッパ」オープニングは、

弾むようなかわいらしさを感じるマーチ調の曲が魅力的。 「オープニング集」ラストはドラマ「暴れん坊将軍」よりオープニング。

遠くからやってくる馬の蹄の音や拍子木の音もその場で演奏されるこだわり様で、 
耳馴染みのある豪快かつ繊細なテーマを生演奏で聞ける喜びを噛みしめながら聞いていると、

続いて剣劇のシーンで流れていた勇ましい「立ち回りBGM」へ。 「暴れん坊将軍」の音楽といえばオープニングと本曲なだけに、

オーケストラで連続して聞く事が出来たのはとても嬉しかったです。

 

西さん「オープニング曲はパワーのある曲が多いので、演奏される方もとてもハードです。100メートル走を7本走っているようなものです。 
    全力疾走の後に全力疾走が続き、最後は将軍様が走ってくるというとても体力が必要とされる演奏だったと思います」

 

08:ゲッターロボ 組曲 
A-1 オープニング 
H-3 合体訓練 
G-5 悲しみ 
I-3 不気味 
I-10 大危機 
J-2 ゲット・マシン発進! 
I-8 戦闘 
I-9 空中戦 
B-1 エンディング 
-MC-

 

ここからは菊池先生が手がけられたロボットアニメの作品群の中から、代表格であるアニメ「ゲッターロボ」の楽曲の数々を組曲形式で。 
まずはオープニング「ゲッターロボ!」から。勇ましいブラスはもちろん、

弦楽器と打楽器の荒ぶる演奏を目の前で味わう事が出来たのが嬉しく。 全体的にどこか不気味さや不穏だったり、

哀愁を感じる楽曲が多いのが印象的で、ゲッターの根源にある、一種の怖さを思わせるようでした。

 

西さんの「菊池先生の楽曲はハイカロリーハイテンションな曲が続きます。先生のオーケストレーションは素晴らしく、 
     いろいろな楽器を重ねて生みだされているのですが、

     演歌的なサウンドも菊池先生によってカッコイイサウンドになっていくんですね」

 

09:バビル二世 組曲 
A-1 超能力大作戦 
L-1 サブタイトル 
D-1 一輪の花 
A-3 現実となった伝説 
G-5 悪魔の野望 
H-4 悪魔の再挑戦 
F-9 悪魔の猛威 
G-1 ポセイドン出撃 
D-5 とべ、ロプロス ロデムをのせて 
G-3 反撃・エネルギー衝撃波! 
B-1 決死の攻防 (メロオケ)

 

続いては菊池先生が手がけられたヒーローアニメの作品からアニメ「バビル二世」の組曲。 
壮大さと疾走感がたまらないオープニングは、歌われている水木一郎さんのライブで聞ける機会に恵まれているものの、 
今回、オーケストラの生演奏で味わってみるとその迫力はもちろん、勇ましさの中の颯爽とした魅力を再認識する事が出来ました。 
直前の「ゲッターロボ」と比べ、よりきりりとした、凛とした印象を受ける楽曲が多く、菊池先生の表現の幅広さを体感した思いでした。

 

~休憩~

 

10:ドラえもん 組曲 
ドラえもんのうた 
サブタイトル 
スネ夫の自慢話テーマ 
しずかちゃんのテーマ 
のび太のスキップ 
ジャイアンのテーマ 
困ったな~ 
のび太の足取り重く 
ひみつ道具登場! 
ひみつ道具大行進 
タケコプターで大空を 
大きく広がる青い空 
…と思ったら大失敗 
失敗続く 
トボトボと 
美しい思い出 
ひみつ道具登場その2 
ひみつ道具の解説 
街をきれいにしよう! 
ピンチ! 
失敗! 逃げるしかない 
ドラえも~ん(泣) 
平和な街 
次回の予告 
青い空はポケットさ 
-MC-

 

20分ほどの休憩を挟んで後半へ。後半は菊池先生の手がけられたアニメの代表格ともいえるアニメ「ドラえもん」の楽曲群を組曲形式で。 
ワクワクするオープニングからはじまり、まるでアニメ一編を丸々見ている様な楽曲の構成に、様々なシーンが思い出されました。 
独特のユーモアな音色も、オーケストラ演奏を間近で見られた事で、様々な楽器が使用されて生み出されている事がわかり、

目から鱗でした。 個人的に小さい時からとても馴染み深い作品なので、

目の前で体に染みついた楽曲が演奏されていく様子に自然と笑顔になっていました。

 

山﨑さん「私はどうやら人の心が読めるようになった様で、皆さんはこう思っていると思います『もう少し聞きたいな』と」 
観客笑。 
山﨑さん「ですので、今回はスペシャルアンコールとしまして、『青空っていいな』『ぼくドラえもん』をお届けしたいと思います」

 

11:青空っていいな (TVサイズ) 
12:ぼくドラえもん (TVサイズ) 
-MC-

 

ここで引き続き、アニメ「ドラえもん」より入場時に配布されたプログラムにも載っていない楽曲をサプライズでご披露。 
個人的にとても大好きな七代目エンディング「青空っていいな」では高揚感を誘う前奏から

キラキラした本編を生演奏で聞けてグッときました。 続く、二代目オープニング「ぼくドラえもん」では

高らかな前奏と共にサウンドホースを二本振りまわされていたパーカッション奏者の方が印象的でした。 
非常に馴染みが深い楽曲なので、今回のサプライズでの披露はとても嬉しうございました。

 

西さん「やっぱり『ドラえもん』といえばこの曲も聞きたいよなあという事で、前半の編曲をされたイタリア在住の今堀拓也さんが 
    『三日寝ないで作ったよ』とボーナストラック的に二曲を仕上げてくださいました」

 

13:ドラゴンボールZ 組曲 「ナメック星編」 
序曲 
M1002 神龍登場 (映画「ドラゴンボールZ 地球まるごと超決戦」より) 
J6 神龍のテーマ 
M710、M708A-1 プロローグ、サブタイトル 
第1楽章 
M724 フリーザ軍のテーマ 
M727 ベジータのテーマ 
M742 激戦 
M741 激戦 
第2楽章 
M702 消えるナメック星 
M817 悟飯、潜在パワーを発揮 
M810 ピッコロのテーマ 
M814 悟空 VS ピッコロVS 
M818 クリリンが… 
M902 この世で一番強いヤツ (映画「ドラゴンボールZ この世で一番強いヤツ」より) 
第3楽章 
M1109 ショック~戦いへの決意 
M816 超サイヤ人孫悟空 
M811 激戦 
M1023 地球に降り注ぐ光 (神精樹のテーマ) 
M1020 元気玉のテーマ 
-MC-

 

組曲のラストは菊池先生が手がけられたヒーローアニメの中でも、世界的な代表作ともいえるアニメ「DRAGON BALL Z」より、 
主人公・孫悟空達と宇宙の帝王と呼ばれたフリーザの一軍との戦いを描いた「ナメック星編」で使用された楽曲を中心に

劇場版の楽曲も交えて。 全3楽章にまとめられた楽曲はどれもドラマチックで、

演奏に合わせてアニメの様々な場面が頭に浮かんできました。 「ドラえもん」と同じく「DRAGON BALL Z」、

中でも「フリーザ編」はとても馴染みが深い話なので、 
オーケストラの演奏を聞きながらテレビを見ていた当時に引き戻される様な、なんとも不思議な心地でした。

 

西さん「私も山崎さんと同じ人の心が読める能力がついさっき身に付いた様です。歌いたいと思っている方が沢山いると思います」 
観客笑。 
西さん「実はアンケート用紙の裏には何やら歌詞が書いてあります。私はなんて書いてあるのか読めないんですけども……」 
観客笑。 
西さん「よろしければ、そちらをお読みになって一緒に歌おうというコーナーです。むしろ皆さんは読まなくても歌えると思うのですが」

 

14:レッツゴー!! ライダーキック (1C)/観客 
15:バビル二世 (1C)/観客
16:ゲッターロボ! (1C)/観客

 

コンサートのラストは観客が起立し、オーケストラの生演奏で菊池先生が手がけられた楽曲を合唱するコーナー。 
アニメソング、特撮ソングの中でもスタンダード中のスタンダードともいえる曲ばかりなので、観客の合唱は生き生きとしたもの。 
「バビル二世」ではメインを歌う観客と「ヤア!」という合いの手を入れる観客に分かれていたのも素敵でした。 
菊池先生の楽曲で育ったであろう観客達なので、合唱にも力が入っているように感じ、数百人規模での合唱はとても迫力がありました。

 

出演者の皆さんに拍手が贈られる中、指揮の山﨑さんに続いてオーケストラの皆さんが順番に退場されていき、 
閉演のアナウンスが流れる中、「菊池俊輔 音楽祭」は終演となりました。

 

菊池先生の楽曲だけのオーケストラコンサートというのは今回が初との事でしたが、序盤のオープニング曲集はもちろん、 
それぞれの組曲も非常にバラエティ豊かで、改めて菊池先生の作風の幅広さを体感することが出来ました。 
今回はその幅広い作風のほんの一部であり、今回披露された作品以外にも菊池先生の代表曲はまだまだ沢山あると思うと、 
欲が出てしまって第二弾、第三弾の開催を期待してしまいます。 
また後半の「ドラえもん」「DRAGON BALL Z」は小さい頃から体にすり込まれて親しみ深い作品でしたので、 
そのBGMをオーケストラによる生演奏で聞く事が出来たのはたまらないものがございました。


 

補足

 

・会場には渡辺宙明先生もご来場されていました。

 

・「宇宙パトロールホッパ」演奏前には指揮の山﨑さんの手元に楽譜が見当たらず、時間をかけて探される場面も。

 

・西さん「『♪こんなこと いいな』の部分と道具を取り出す時の音色と『♪あったまテカテカ』は全て同じ音形なんですね。 
    『ドラえもん』の世界感を統一する為に同じモチーフを用いているあたりに菊池先生の凄さを感じます」 

 

・ドラゴンボールZ 組曲 「ナメック星編」では楽章が終わるたびに汗を拭いながら指揮をされる山﨑さんの姿が印象的。 
 菊池先生の楽曲は演奏される側はもちろん、指揮をされる方も相当なスタミナを要されるという事を目の当たりにしました。

 

・ラストの合唱コーナーでは指揮の山﨑さんは観客とオーケストラの両方を指揮されていました。

 

・当日の様子は11月14日のNHK「おはよう日本」の「けさのクローズアップ」でオーケストラのリハーサル風景や 
 宙明先生のインタビュー、西さんのアニメ音楽を作られた方々への思いを織り交ぜて放送されていました。

 

・アニメや特撮の音楽を作られてきた方々にスポットを当てるべく敬意をもって尽力されている西さんの行動が 
 近い将来なんらかの形で実を結んで欲しいと思う次第でございました。

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