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渡辺宙明スペシャルコンサート 
17.3.4 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール 

 

監修・作曲・指揮/渡辺宙明

 

構成・ナビゲーター/貴日ワタリ

 

楽譜作成/堀井友徳

 

司会/向井理絵

 

指揮/徳永洋明 

演奏/渡辺宙明スペシャルブラス 
   Tp.首席.エリック・ミヤシロ Tb.首席.中川英二郎  
   Fl.(picc).杉原 夏海 Fl.向井理絵 
   Jazz Fl.那瀬ひとみ Cl.宮前和美 A.Sax.細川紘希 T.Sax.角口圭都 
   Tp. 葉室晃 藏持智明 東野匡訓 Tb.廣田純一 黒木良太 
   Bass tb.山田航平 Timp.大家一将 Perc.林瑞穂 大場章裕 
   key.篠田元一 岩城直也 
   G.外園一馬 G.山崎淳 B.須﨑誠 Dr.山本真央樹 Pi.貴日ワタリ

 


2015年に90歳を迎えられ、今もなお精力的に作曲活動をされている渡辺宙明先生。 
1950年代に映画音楽、1970年代からはアニメや特撮を多く手がけられており、 
高揚感と哀愁を感じる独自の音色は"宙明節"(ちゅうめいぶし)と称され、国内外を問わずファンが多く、 
"宙明先生"(ちゅうめいせんせい)の愛称で親しまれている先生のスペシャルコンサートが開催されました。 

今回はザ☆カインズのリーダーである貴日ワタリさんが構成をご担当。 
アニメや特撮はもちろん、音楽への造詣がとても深い貴日さんが構成を担当されるという事でとても楽しみにしていました。

コンサートの性質上、今回のレポートはざっくりとした内容でございます。予めご了承頂けましたら幸いです。

 

会場は宙明先生の「卆寿記念コンサート」シリーズも開催された渋谷区文化総合センター大和田四階にあるさくらホール。 
ステージ上にはすでに各楽器のブースがセットされており、会場にはアニメ、特撮の関係者のお姿も数多く見受けられました。 
来場者には今回のプログラムが書かれたパンフレットが配布されました。

開演の5分ほど前になった頃、客席に宙明先生と「マジンガーZ」「デビルマン」「キューティーハニー」等を描かれた 
漫画家の永井豪先生のお姿が見えると観客から拍手が贈られていました。

 

しばらくすると渡辺宙明スペシャルブラスの皆さんがステージに登場され、最後に指揮の徳永洋明さんがご登場。 
渡辺宙明スペシャルブラスの皆さんの準備が整った事が確認されると「渡辺宙明スペシャルコンサート」開演です。


01:人造人間キカイダー 
「三郎のテーマ」~「M-2(乱闘)」 
-MC-

 

ステージ上の首席トランペットのエリック・ミヤシロさんにスポットライトが当たり、トランペットのみで奏でられたのは 
特撮「人造人間キカイダー」から好敵手ハカイダー/サブローのテーマの冒頭口笛部分からオリジナルスコアに則ったフルサイズ演奏。 
ダーティな哀愁を感じるメロディはトランペット演奏では原曲の口笛とはまた違った趣の魅力で一曲目からガツンとやられました。 
なだれ込むように演奏された「M-2(乱闘)」は中間のキーボードの演奏がブラックミュージックの香りを感じて魅力的。

 

ここで今回の構成とナビゲーターを担当される貴日さんと司会とフルート演奏を担当される向井理絵さんがご登場。 
向井さんがエリックさん、中川英二郎さん、篠田元一さんをお一人づつ紹介された後、渡辺宙明スペシャルブラスの皆さん全体をご紹介。 
続いて指揮の徳永さん、構成の貴日さん、そして客席にいらっしゃる宙明先生と永井豪先生をご紹介。

それぞれに観客から拍手が贈られました。

 

・今回は観客のリクエストで開催されたコンサート。 
・裏のテーマは宙明先生の音楽がどのように変化していったか。

 

02:「秘密戦隊ゴレンジャー」組曲 
パート1「進め! ゴレンジャー」 
パート2「M-5-2 (走り、乱闘)」~「M-21 (事件発生)」~「M-27A (ミリタリー・潜入)」 
パート3「M-3 (乱闘)」~「とべ! バリブルーン」~「M-34 (アイキャッチ)」 
パート4「M-31A (静かな緊張)」~「IIM-9-2 (危機)」~「IIIM-12 (悪迫る)」 
パート5「IIIM-8-2 (走り)」~「バリドリーンのうた」 
パート6「IIM-2 (乱闘・危機)」~「M-13 (哀愁)」 
パート7「秘密戦隊ゴレンジャー」 
-MC-

 

続いては特撮「秘密戦隊ゴレンジャー」の組曲。貴日さんの解説によるとブラックミュージック、ブラスミュージック等の 
アクの強いサウンドを取り入れ構築された楽曲群という事で、どこか重さと暗さを感じる序盤から、軽やかに管楽器、 
躍動感あふれるパーカッションが演奏されていき聞き応えたっぷり。「進め! ゴレンジャー」「とべ! バリブルーン」「バリドリーンのうた」 
「秘密戦隊ゴレンジャー」と歌としてもなじみ深い楽曲がポイントポイントで演奏されるのも入りこみ易かったです。

 

・貴日さんと向井さんがご登場。 
・貴日さん「続いての組曲は『マジンガーZ』からで『魔神抄』というちょっと中二病っぽいタイトルがついていますけれど、 
     これは、数多くある楽曲の中から選びに選んだものであるという思いから『抄』という言葉をつけさせていただきました。 
     もっと聞きたいなあという方がいらしゃるとは思うのですが、それはCDを買って聞いていただければと思います」 
 観客笑。


03:マジンガーZ組曲「魔神抄」 
パート1「A-1 (マジンガーZ)」 
パート2「G-2 (絶体絶命)」~「I-1B (サブタイトル)」~「D-4' (緊張)」~「E-1 (悲愴)」 
パート3"進撃!あしゅら軍団" 「J-2 (出現)」~「IIM-1 (緊迫)」~「IIM-12' (群衆の走り)」~「J-4 (ショック)」~「C-5 (悪の進軍)」 
パート4"マジンガーZ出動!" 「B-1 (Zのテーマ)」 
パート5"マジンガーZ対機械獣" 「J-3 (ショック)」~「C-1B (出撃)」~「D-4 (闘争)」 
パート6"一難去って、仲間たち" 「H-11 (子ども達遊ぶ)」~「IIIM-1 (戦いコミック)」 
パート7"空飛ぶ機械獣~ジェットスクランダー" 「IIM-20 (出現)」~「IIM-8 (空飛ぶマジンガーZ)」~「H-7 (バイク走り)」 
パート8「B-5 (ぼくらのマジンガーZ)」 
-MC-

 

続いては宙明先生のアニメデビュー作「マジンガーZ」の組曲。颯爽とした格好良さを再認識する「マジンガーZ」からはじまり、 
一転して不穏な雰囲気な楽曲が続く中で演奏される「Zのテーマ」の勇壮さに惚れ惚れした後はアクション的な楽曲になり、 
コミカルさを交えつつ「ぼくらのマジンガーZ」で完結という流れで展開される組曲は番組一本を見ている構成で実にダイナミックでした。

 

~休憩~

 

04:「マジンガーZ対暗黒大将軍」組曲 
パート1「IVM-13 (メインタイトル)」~「IVM-1 (明るい遊び)」~「IVM-9 (機械獣の行進)」~「IVM-3 (ピンチ)」 
パート2「IIM-21 (わが友マジンガーZ)」 
パート3「IVM-5 (マジンガーの危機)」~「IVM-14 (出現)」 
パート4「IVM-2 (機械獣出現)」~「IVM-6 (激しい戦闘)」 
パート5「IVM-4 (勝利的戦い)」~「IVM-11 (空飛ぶマジンガーZ)」 
-MC-

 

約10分程度の休憩を挟み、後半は映画「マジンガーZ対暗黒大将軍」の組曲からスタート。 
「わが友マジンガーZ」のイントロ部分等で印象的な鍵盤ハーモニカの演奏は貴日さんが担当され、 
観客は哀愁あふれる楽曲をスペシャルブラスの演奏をたっぷりと噛みしめていました。 
映画版ならではのドラマチックさはもちろん、テレビ版の重厚な印象から比べとてもオシャレな印象で 
同じ「マジンガーZ」という作品でも楽曲の変遷を感じることが出来、大変興味深いものがありました。

 

向井さん「続いては『戦隊アラカルト』です」 
貴日さん「こちらのコーナーは様々なコンサートやライブではなかなか演奏されない曲を選びたいという事で、 
     その中でも宙明先生の思い入れが強い曲を、宙明先生が手がけられた作品中から一曲ずつ選出されました」

 

05:スペードエース若き獅子 (1.5C) 
-MC- 
06:青春のテーマ 
-MC-

 

今も続く特撮シリーズであるスーパー戦隊シリーズから宙明先生が彩った初期の楽曲をアラカルトで。 
まずは「ジャッカー電撃隊」より"ジャンプ一閃赤い風! 唸って踊る核の鞭!"スペードエースのテーマ。 
パーカッションの情熱的な演奏が抜群のイントロからブラスが加わり、

颯爽とした頼もしさを感じるエリックさんのメロディがたまりません。 間奏のピアノソロもぐっと大人な雰囲気でいぶし銀の魅力でした。

貴日さんの解説を挟み、続いては「電子戦隊デンジマン」よりデンジグリーン/緑川達也役の内田直哉さんが歌われた

「ひとりぼっちの青春」のアレンジ版「青春のテーマ」。宙明先生も特に思い入れの強い曲だとか。 
「スペードエース」からがらりと雰囲気が変わり、情感たっぷりに。ムードある音色のバラードにうっとりと聞き入りました。

 

向井さん「続いての曲は『ファイト! サンバルカンロボ』ですが」 
貴日さん「はい。この曲は編曲がいちひさし、武市昌久先生の別名ですが、編曲者が変わることでイメージも変わります。 
     そういった所を意識して聞いてみるのも面白いと思います」

 

07:ファイト! サンバルカンロボ (1C) 
-MC- 
08:フラッシュ! ゴーグルV (1C) 
-MC- 
09:バトルフィーバーJ (2C)

 

「戦隊アラカルト」続いては「太陽戦隊サンバルカン」よりサンバルカンロボのテーマ。 
勇壮なブラスと控えめに聞こえる電子音が個性的なイントロからサビへ向けて盛り上がっていくドラマチックさ、 
更に間奏での颯爽としたブラスと小気味いいパーカッションは、生演奏で聞くと一層たまらないものがございました。 
「続いての曲の編曲は久石譲さん。80年代の雰囲気、ベースラインにも注目してください」という貴日さんの解説の後に演奏されたのは、 
「大戦隊ゴーグルV」から「フラッシュ! ゴーグルV」。ノリのイイベース演奏、

情熱的なパーカッションは臨場感抜群で再現度が素晴らしかったです。 ラストは「バトルフィーバーJ」よりオープニング。

「ディスコミュージックを取り入れた煌びやかさ、音の使い方が面白い」という 

貴日さんの解説を受けてから演奏を目で見てみると、印象的なティンパ二はもちろん、楽器の演奏され方に興味深い所が多々でした。

貴日さん「楽しい時間はあっという間ですが、コンサートも終盤になってきました」 
向井さん「コンサートのラストは『卆寿記念コンサート』シリーズでお客様から頂いたアンケートで人気の高い曲をお届けします」 
貴日さん「私もどの曲が一位だったのかはわからないんですけど、まずは『勝利だ! アクマイザー3』です。

     まぁ次の作品もその後に演奏しますけど……」 
向井さん「続いては『斗え! 超神ビビューン』ですね」 
貴日さん「どうしましょう、続けて演奏されます? 間に私達出て来ましょうか?」 
向井さん「間を開けつつ、続けて……」 
観客笑。 
貴日さん「開けつつですね。わかりました。そして最後は『ゴーゴーキカイダー』です。 
     この番組は夜20時に放送されたのですが、この作品がテレビから飛び出してきた時にはびっくりしました。とにかくアダルトで。 
     それまでは『子供はこれくらいでいいでしょ?』という感じで"与えられる"音楽が多かったのですが、 
     いきなり大人の感性が子供番組に出てきたのは、当時の我々には衝撃的だったんですね」

 

10:勝利だ! アクマイザー3  (2C) 
11:斗え! 超神ビビューン (2C)

 

ここでは「卆寿記念コンサート」シリーズのアンケートでファンからの人気が高かったという 
特撮「アクマイザー3」と特撮「超神ビビューン」のオープニングを間を開けつつ連続で。 
「アクマイザー3」では頼もしいブラス演奏と独特なギターのゆらぎ等、ストロングスタイルの爽快さ、 
続く「ビビューン」では掴みからわくわくさせらるイントロから、徐々に煌びやかになっていく痛快さをそれぞれ文字通り体感できました。 
歌のライブでもこの二作品を連続で聞く事が出来る機会はなかなか無いだけに嬉しい限りでございました。

 

徳永さん「次の曲です。その後、お楽しみの皆さんに歌って頂くコーナーがあります。 
     この曲は短めの曲なので皆さんは演奏が終わったらすぐ拍手をください」 
観客笑。

 

12:ゴーゴーキカイダー (1C) 
-MC-

 

アンケートの人気曲コーナーラストは宙明先生の特撮デビューである特撮「人造人間キカイダー」よりオープニング。 
渋みが効いた中にヒロイックな頼もしさを感じる不世出の一曲は、一番が短いながらも堂々とした存在感でした。 
終わった途端に徳永さんが客席を向き煽る仕草をすると観客は大きな拍手をステージ上に贈っていました。

 

貴日さん、向井さんが登場され、客席から宙明先生がご登壇。 
ラストは宙明先生の指揮とオーケストラの演奏で観客による大合唱するそのものずばりの「宙明先生の指揮で歌おうコーナー」。

●宙明先生の指揮で歌おうコーナー

13:秘密先生ゴレンジャー (1C)/観客

 

「宙明先生の指揮で歌おうコーナー」一曲目は特撮「秘密戦隊ゴレンジャー」よりエンディング。 
観客は「バンバラバンバンバン」の後はメインのパートを歌う人あり、合いの手を担当する人ありと思い思いに歌われていました。

14:Zのテーマ (1C)/観客 
15:マジンガーZ (1C)/観客

 

続いてはアニメ「マジンガーZ」より「Zのテーマ」と「マジンガーZ」を連続で。 
宙明先生のアイディアで永井豪先生もステージ上に登場され、スタッフさんが用意した椅子に腰かけてご覧になっていました。 
二曲とも観客による合唱の厚みは迫力でしたが、特に「Zのテーマ」の合唱は歌詞も伴って胸にくるものがございました。 
このコーナーは三曲とも特に歌詞カードなどは配布されていませんでしたが、観客の誰もが歌えていたのも印象深かったです。

 

●記念撮影

 

宙明先生と永井豪先生、貴日さん、指揮の徳永さん、渡辺宙明スペシャルブラスの皆さんで記念撮影。 
観客も自由に撮影する事が出来るフォトセッションが設けられました。

客席の左、右、中央、そして二階と、それぞれ向いて撮影されていました。

 

徳永さん「コンサートなので、写真撮影では終わらせません」

 

-スペシャルアンコール- 
16:マジンガーZ (1C)/観客

 

宙明先生、永井豪先生が拍手の中、見送られると指揮の徳永さんの提案でスペシャルアンコールで「マジンガーZ」をもう一回。 
コンサートの最後という事もあり、観客の合唱にも力が入っていましたが、それにも増して徳永さんの指揮も実にパワフルでした。

 

貴日さんによって再び宙明先生、永井豪先生が呼びこまれました。

宙明先生「皆さん今日は本当にありがとうございました。良い演奏に私も満足しましたし、皆さんも満足されたと思います。 
     きっとまたコンサートをやると思いますので、その時もお楽しみに」

 

拍手の中、宙明先生、永井豪先生が見送られた後、渡辺宙明スペシャルブラスの皆さんが順番に退場されていき、 
「渡辺宙明スペシャルコンサート」は終演となりました。

 

「卆寿記念コンサート」シリーズを経て、貴日さんの構成によるコンサートという事でどういった感じになるかと思っていましたが、 
一曲目が「三郎のテーマ」という選曲にシビれたのに始まり、演奏されたどの組曲もまるで番組を一話分丸々見ている様な構成で

とてもドラマチック。 これまで、アーティストの方々のライブで聞く機会に恵まれていた楽曲達も、

渡辺宙明スペシャルブラスの皆さんの生演奏を見聞きすると、 これまでなんとなく聞いていた楽器の音が目の前で演奏され、

聞くだけでなく見る事でより厚みや立体感を憶え、新鮮な発見がありました。


 

特別ゲスト/永井豪


 

補足

 

・指揮は山崎滋さんの予定でしたが交通事故に巻きこまれ経過観察中の為、徳永さんが担当されました。

 

・貴日さん「『マジンガーZ』や『キカイダー』が宙明先生の楽曲の始祖となり、この『マジンガーZ対暗黒大将軍』から 
      より明確な音の塊というモチーフ、難しい言葉ではコンビネーション・オブ・ディミニッシュと言いまして、 
      このスタイルがアニメのロボットがあたかも目の前にいるような感覚になり、一つの宙明先生の形になっていきます。 
      後に宙明先生にお伺いした所によると、息子さんの渡辺俊幸さんから言われてこの技法を取り入れたそうで、 
      この時からすでに息子さんには音楽家の素養をお持ちだったという事ですね」

 

・貴日さん「『デンジマン』は平坦な『デンジマン』と頭が上がる『デンジマン』の二種類の呼び方があるんですね。 
     当時から二通りの呼ばれ方がされていましたが、どっちが正解なのかは今もわかりません」 
 観客笑。

 

・向井さん「貴日さんはどの曲が好きですか?」 
 貴日さん「んー、その年代に思い入れがありますからね」

 

・貴日さん「先生は御年91歳ですが、今後も92、93、100歳と末永くご活躍頂きたいと思います!」

 

・宙明先生「いやぁーとにかくすごい演奏ですよね。大満足です!」

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