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渡辺宙明卆寿記念コンサート 夜の部

15.8.30 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

 

監修・作曲/渡辺宙明

 

構成・編集/堀井友徳

 

ゲスト/渡辺俊幸 ナマコプリ(マコ・プリンシパル ナマコラブ)

 

司会/西耕一 男性の方(お名前失念。申し訳ありません)

 

指揮/松井慶太 
コンサートマスター/三宅政弘 
演奏/オーケストラ・トリプティーク


 

渡辺宙明先生。 
本名の宙明(みちあき)の読みを変えて渡辺宙明(ちゅうめい)というペンネームで活動され 
1953年のラジオドラマ「アトムボーイ」で作曲家としてデビュー後、50年代から70年代初頭までは「人形佐七捕物帖」シリーズや 
「スーパージャイアンツシリーズ」シリーズ等の新東宝を中心とした映画音楽を中心に、数々の作品を手掛けられました。 
70年代にはアニメ「マジンガーZ」、特撮「人造人間キカイダー」を皮切りに、数々のテレビまんがの音楽を手掛けられるようになり、 
高揚感と哀愁を併せ持つ独特のサウンド、革新的な音楽への追求から生まれた不世出の旋律は"宙明節"(ちゅうめいぶし)と称され、 
ファンからは宙明先生(ちゅうめいせんせい)という愛称で呼ばれ親しまれています。

 

宙明先生が2015年8月19日に90歳、卆寿を迎えられた事を記念し、評論家の西耕一さんを中心に企画・開催されたのが、 
今回の「渡辺宙明卆寿記念コンサート」です。 
コンサートの概要は作中の劇伴、BGMを宙明先生とも親交のある作曲家の堀井友徳さんが宙明先生のオリジナルスコアを忠実にアレンジし、 
組曲として構築され、日本の作曲家を専門に演奏するオーケストラ・トリプティークの皆さんが演奏されるというもの。 
本来は昼の部のみの開催だったのですが、好評につきチケットが完売した事を受け、夜の部が追加公演として設けられました。

 

ゲストには宙明先生のご子息であり作曲家として映画平成版「モスラ」シリーズ、大河ドラマ「毛利元就」「利家とまつ~加賀百万石物語~」 
アニメ「銀河漂流バイファム」「アイドル伝説えり子」「宇宙兄弟」などを手掛けられた渡辺俊幸さんがご出演。 
さらに夜の部には俊幸さんのご息女でアーティストのマコ・プリンシパルさんとナマコラブさんによる 
芸術家アイドルユニット、ナマコプリのお二人もご出演。親子孫三代の共演が実現しました。今回はその夜の部のレポートです。

 

コンサートの性質上、今回のレポートはざっくりとした内容でございます。予めご了承頂けましたら幸いです。

 

会場は東京の渋谷駅のほど近くにある渋谷区文化総合センター大和田の四階に設けられているさくらホール。 
天井が高く、落ち着いた色合いの趣のあるホールには多くの観客が来場しており、アニメ、特撮業界の関係者の方の顔もちらほら。 
ステージ上にはすでにオーケストラの皆さんの各ブースがセットされており、 
時折聞こえてくる調音の音にオーケストラの演奏を聞きに来た、という高揚感が湧いてきます。


●プレトーク

 

開演15分前になると男性の方の司会で、宙明先生と堀井さんによるプレトークが行われました。 


・「渡辺宙明卆寿記念コンサート」開催にあたり宙明先生から一言。 
・堀井さんによる今回のアレンジへのこだわりは「当時のオリジナルの譜面をそのままを使用し、忠実に再現する」。 
・劇伴の場合、譜面が現存している事自体が少ないとか。 
 宙明先生「せっかく書いたんだから捨てるわけにはいきませんね。使い捨てではなく力を込めて書きましたから」 
・昼の部をご覧になった宙明先生の感想。 
・今後の「渡辺宙明卆寿記念コンサート」へ向けての堀井さんの意気込みと宙明先生の思い。

宙明先生、堀井さんが退場されると、しばらくして開演に当たっての諸注意がアナウンス。 
今回は録音も行われ、後日CD化が企画されているそうです。 
その後、オーケストラ・トリプティークの皆さんがステージに登場され、最後に指揮の松井慶太さんがご登場。 
オーケストラの皆さんの準備が整った事が確認されると「渡辺宙明卆寿記念コンサート 夜の部」いよいよ開演です。

 

01:「マジンガーZ」組曲 
PART1「マジンガーZ主題歌」~「II-2 機械獣の進撃」 
PART2「C-4 Zの危機」~「C-5 マジンガーZ対機械獣」 
PART3「Zのテーマ」 
-MC-

 

オープニングを飾るのは宙明先生のアニメデビュー作である「マジンガーZ」の楽曲から。 
オーケストラアレンジされた主題歌が高らかに演奏されると、その音の厚みと迫力にわくわくしました。 
さらに機械獣との戦闘時に流れていた音楽を経て「Zのテーマ」での荘厳な勇ましさに背筋が伸びます。

 

ここで司会であり今回のコンサートの尽力者である西耕一さんがご登場。 
ご挨拶の後、指揮、オーケストラの紹介があり、今回のコンサートの趣旨説明を行われました。

 

02:「グレートマジンガー」組曲 
PART1「おれはグレートマジンガー」 
PART2「I-2 戦闘」 
PART3「鉄也のテーマ」~「M-6 グレート・ピンチ」~「M-1 戦闘」

 

続いては「マジンガーZ」の兄弟作であるアニメ「グレートマジンガー」より。 
元々の主題歌はロック調ですが、それをオーケストラで聞く違いの面白さを味わいました。 
続くアクション曲を堪能しつつ、その合間に聞き馴染みのある「鉄也のテーマ」が入っていて嬉しかったです。

 

03:「大鉄人17」組曲 
PART1「M-33 サブタイトル(出現)」~「M-9 恐慌」~「M-36-2 アクセント」~「M-12 危機」 
PART2「M-8 敵ロボット来襲」~「M-7 ロボットの戦い」~「M-4 戦闘」~「M-6 ロボットの戦闘」 
PART3「M-32 出現」~「M-5 走り」~「M-4' 戦闘」~「M-21 艦隊」 
PART4「M-25 賛歌」~「M-1 Aテーマアレンジ」~「M-2 Bテーマアレンジ」

 

ストリングスの皆さんがごっそり退場され、小編成で始まったのは特撮「大鉄人17」の楽曲群。 
全体的に巨大さを感じるシリアスで重々しい印象の楽曲が多く、緊迫感と緊張感を誘われました。 
ストリングスがいないながらも、管楽器、打楽器の活躍ぶりは生演奏ならではの迫力でした。

 

ストリングスの皆さんも合流され、次の楽曲が演奏される直前にステージが暗くなり、 
不敵な高笑いで客席に現れたのは「オジモン帝国の皇帝」を名乗るオジモン三世という男と黒服姿の男達。 

客席を練り歩きながら「宇宙最強の作曲家」である宙明先生をオジモン帝国にさらって行こうとしたところ、 
突然、フルートの向井理絵さんがマイクを持ってその場に立ち上りました。

 

向井さん「宙明先生がたいへんなことに! 会場の皆さん、ご協力をお願いします」 
とても丁寧なヒーローショーのおねえさんぶりに観客も和やかな雰囲気に。 
向井さん「私が『ミラクル戦隊』と言いますので、皆さんは『ナマコプリ』と大きな声で呼んでください! 
     いきますよ! 『ミラクル戦隊』!」 
観客「ナマコプリー!」 
向井さん「まだまだですね。二階の方もお願いしますよ」 
観客笑。 
向井さん「ミラクル戦隊!」 
観客「ナマコプリー!」 
向井さん「それでは最後に、一番大きな声で。ミラクル戦隊ー!?」 
観客「ナマコプリィイイイイイイイ!!」

 

観客の声を受け、宙明先生のお孫さんであるマコ・プリンシパルさん、ナマコラブさんによるユニット、ナマコプリのお二人がご登場。 

マコさんはかわいらしく、ナマコラブさんは色っぽくそれぞれの名乗り口上をされ、

マコさん「もーっ、おじいちゃんのコンサートを邪魔するなんてゆるせないっ!」 
ナマコさん「この歌をお聞きなさいっ!」

 

04:ミラクル戦隊ナマコプリ/ナマコプリ 

 

オーケストラの演奏で始まったのは、ナマコプリの為に宙明先生が書き下ろされた新曲「ミラクル戦隊ナマコプリ」。初披露です。 
宙明先生ならではの旋律と擬音が織り交ぜられた楽曲に、ダイナミックさとエレガントさが入り混じった演奏と 
ナマコプリのお二人の可愛らしい歌声とが不思議と調和しているようでした。

 

歌の攻撃を受けてオジモン三世という男と黒服姿の男達は律儀に宙明先生に挨拶をしつつ退散。 
指揮の松井さんがナマコプリのお二人に花を渡し激励されました。 
その後「この後もまだまだ続くよー!」とナマコプリのお二人が拍手で退場され、次の演目へ。

 

05:「太陽戦隊サンバルカン」組曲 
PART1「M-1-1 Aテーマ」~「M-25 サブタイトル」~「M-16 緊迫」~「M-8 必殺剣」 
PART2「M-5 サンバルカン出現」~「M-4 ジャガーバルカン」~「M-3 乱闘」~「M-1-2 Aテーママーチ」

 

続いては特撮より、宙明先生が初期の作品を彩ったスーパー戦隊シリーズの中から「太陽戦隊サンバルカン」。 
主題歌をはじめ全体的に軽快なテンポの演奏でしたが、途中でピアノメインのスリリングな楽曲や 
「ファイト! サンバルカンロボ」へとつながる勇ましさあふれる楽曲も楽しめ、宙明先生の作風の幅広さを体感しました。

 

~休憩~

 

06:「スパイダーマン」組曲 
PART1「M-1 スパイダーマン誕生」~「A-3 スパイダーマンアクション」 
PART2「B-1 躍動する若者」~「B-3 GP-7」 
PART3「E-3 ひとみのテーマ」~「G-1 友情」~「G-2 レオパルドン」 
PART4「E-2 機械獣登場」~「F-3 闇に蠢くニンダー」~「H-1 マーベラー飛来」 
PART5「I-8 駆けろ! スパイダーマン」 
-MC-

 

ここで約10分間の休憩をはさんで後半へ。まずは宙明先生の楽曲でもファンの多い特撮「スパイダーマン」の楽曲から。 
「スパイダーマン」の特徴ともいえる打楽器を前面に押し出した楽曲は、躍動感があふれ、とてもエキゾチックな魅力。 
打楽器パートの方々の活躍を生で見、そして聞く事が出来たのはとても新鮮で嬉しかったです。

 

ここで西さんが登場され、宙明先生のご子息であるゲストの渡辺俊幸さんを呼び込まれお二人でトーク。

西さん「俊幸さんは今回の為にとある曲の編曲をしていただいたとか」 
俊幸さん「トークゲストとして招かれたのですが、本日の為に特別な曲を編曲をしてきました。 
     導入部分は父の『マジンガーZ』なのですが、その後にどうしても歌いたくなる箇所があります。 
     さらにどうしても父の名前を叫びたくなる場所があります。その際は迷わず『ちゅうめい』でお願いしますね」

 

07:ハッピーバースデー/渡辺俊幸 観客 
-MC-

 

俊幸さんが指揮台に立たれて指揮されたのは「マジンガーZ」のイントロ入りの「ハッピーバースデー」。 
ゴージャスな演奏で観客の大合唱する中、俊幸さんはキビキビと指揮をされ、会場全体で宙明先生をお祝いされました。 

拍手の中、客席でご覧になっていた宙明先生が深々とお辞儀をされました。

 

・宙明先生は90歳。俊幸さんは60歳の還暦を迎えられました。 
 俊幸さん「若い頃はずいぶん年寄りだと思っていた還暦ですが、なってみるとバリバリ仕事をしてますけど、父は90ですからね。 
      90を過ぎてなお一昨年、昨年と映画音楽に携わっている姿を見ると、本当に凄いなと思っていますね」 
・西さん「俊幸さんから見て宙明先生の音楽を一言でいうとどうなりますか?」 
 俊幸さん「これはですね。一言では言い表せませんね」 
 観客笑。 
 俊幸さん「劇伴に関しては魂がこもっている印象ですね。一曲一曲メロディアスで、自分の作家性を出そうという感じがしますね。 
     実は戦隊モノに関してというより、父が手がけた芸能山城組というグループの『恐山』という曲がありまして、 
     当時私は高校生だったのですが山城組でドラムを演奏していまして、その曲で父の芸術的な音楽の素晴らしさを感じましたね」

 

08:「宇宙刑事ギャバン」組曲 
PART1「B-4 マクー城」~「B-22 対決」 
PART2「B-1 宇宙空間」~「A-16 ギャバン行動開始」~「A-15 乱闘」 
PART3「A-6 平和」~「A-24 星空のメッセージ」~「C-1 ミミーとの愛」 
PART4「A-14 戦う電子星獣ドル」~「A-17 サイバリアン発進」 
PART5「B-12 マクー行動開始」~「A-9 苦戦」~「B-11 襲撃2レーザーブレード」 
PART6「A-5-1 乱闘2」 
-MC-

 

俊幸さん、西さんが退場され、宙明先生の作品群でも革新的だった特撮宇宙刑事シリーズより「宇宙刑事ギャバン」の楽曲を。 
約20分に及ぶボリュームの組曲は、暗躍するマクーを思わせる楽曲から始まり、一乗寺烈の頼もしさを思わせる楽曲、 
宇宙の広がりを感じるアレンジの「星空のメッセージ」、マクーとの戦いを思わせるアクティブな楽曲と 
ドラマチックに展開していき、まるで「ギャバン」の本編を一本まるまる見ているような思いでした。

 

-アンコール-

 

全てのプログラムが終わり指揮の松井さんが退場されても拍手は鳴りやまず、 
オーケストラの皆さんも拍手を表す足踏みをされるなか、再び松井さんがご登場され、アンコールへ。

 

09:レーザー・メドレー 3本の剣  

「B-11 マクーの攻撃」~「B-2 異次元大決戦」~「B-3 青き閃光」 
-MC-

 

アンコールは「宇宙刑事ギャバン」より「マクーの攻撃」、「宇宙刑事シャリバン」より「異次元大決戦」、「宇宙刑事シャイダー」より「青き閃光」と 
いずれもクライマックスに流れ、ファンからは「レーザーブレードのテーマ」として親しまれている宇宙刑事シリーズの劇伴を象徴する楽曲をメドレーで。 
独特のスリリングで勇壮な楽曲は、生演奏でしかも連続で聞くとその迫力に圧倒。更にオリジナルスコアに忠実だからこそ味わえる肌の泡立ちぶりでした。

 

西さんが登場され、宙明先生が壇上へ。

 

西さん「いかがでしょうか。今回のコンサートを終えてみて」 
宙明先生「やっぱりいいですね。素晴らしいオーケストラです」 
観客拍手。 
宙明先生「……あんまり他に言う事はないですけど」 
観客笑。 
宙明先生「長生きはするものですね。西さんはじめ多くの方に協力いただいて実現する事が出来とても感謝しています」 
観客拍手。

西さん「実は先生にはもうひとつお仕事をお願いしているのですが、皆様、今日お配りした冊子の中に歌詞が掛かれている紙がございます。 
    先生はかつてはオーケストラの指揮もされていたという事で『スパイダーマン』と『サンバルカン』を先生の指揮で 
    ご来場の皆様と一緒に歌おうとおもいます。皆様お立ちになって元気よく応対いただければと思います。

    皆様の歌声がCDになりますよ」

 

10:駆けろ! スパイダーマン (1C)/観客 
11:太陽戦隊サンバルカン (1C)/観客

 

宙明先生が登壇され、オーケストラの演奏と観客による大合唱で「駆けろ! スパイダーマン」と「太陽戦隊サンバルカン」の主題歌を。 
「駆けろ! ~」では曲中の「スパイダーマン」や「チェンジレオパルドン!」などの合いの手も観客がそれぞれ歌い、 
「スーパーヒーロー魂」でもラストに歌われている「サンバルカン」では、これぞ大団円という雰囲気の中、観客が笑顔で歌われていました。 
オーケストラの演奏はもちろん、宙明先生の指揮のもとで歌う事が出来るというのは、とても貴重で夢のような体験をさせて頂きました。

 

●記念撮影

 

さらにもう一つのプレゼントとして宙明先生、俊幸さん、ナマコプリのお二人、オーケストラの皆さん全員による記念撮影。 
観客も自由に撮影する事が出来、各ネットのSNSなどへのアップも許可されるという太っ腹な大サービス。 
親子孫の貴重なスリーショット、ステージ後方の打楽器の皆さんの賑やかな様子などを観客が撮影していました。


宙明先生「まだまだやるべき仕事は沢山あります! どうぞお楽しみに!」


拍手の中、宙明先生が深々と頭を下げられ、俊幸さん、ナマコプリのお二人とともにご退場。 
続いて指揮の松井さん、コンサートマスターの三宅さんから順にオーケストラの皆さんもご退場され、 
最後のお一人になるまで観客から惜しみない拍手が送られて「渡辺宙明卆寿記念コンサート 夜の部」は閉演となりました。

 

今まで宙明先生が手掛けられた劇伴を扱ったライブ、コンサートに足を運んだ事はなかったのですが、 
宙明先生独特の戦慄をオーケストラならではの音の厚み、生音ならではの臨場感でたっぷりと堪能させていただきました。 
宙明先生、90歳おめでとうございます。

 


補足

 

・組曲内の演奏曲に関しましては配布された冊子を参考にさせていただきました。

 

・当日演奏で使用されたギロは実際に「スパイダーマン」の録音で使用された宙明先生の私物だったとか。

 

・マコさん「おじいちゃんにかわってお仕置きよぉーっ!」

 

・俊幸さん「父は幼少期に私に音楽の才能があると見抜いていたらしく、音楽家になる為にいろいろ教育を受けていたのですが、 
     あまりに厳しくて、途中で音楽家をあきらめてバンドでドラムを叩くようになったんです。 
     ですが父は変わることなく私の活動に協力的で、一緒にバンドを組んでいた仲間のためにアンプを買ってくれたりしていましたね」

 

・宙明先生「卆寿ということですが、長生きはするものですが卒業ではなく一区切り。

     まだまだこれで終わるわけではなく、頑張って楽しんで曲を作っていきます」

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